11月の秋晴れの午後、 思い立って福井県勝山市の越前大仏にでかけた。近くを通った時外観は近くに行って写真を撮ったことはあっても500円の拝観料を払って入るのは10年以上前だ。そのときも入ったのは大仏殿だけだったが今回は広い境内を回った。ちょうど境内は紅葉まっただ中、黄色いイチョウの葉が舞っていた。巨額を投じて作られ、30年前の開業時はバブル期の建物のように思えて評判はわるかった。それが30年経ったいま少し金が色あせ、頑丈ではあるが風雨にさらされた建物は趣が出てきた。
観光施設としてスタートした越前大仏は3000円という高すぎる拝観料で市民や観光客、観光業者にそっぽを向かれた。初年度は物珍しさで70万人あった入場者もすぐに10万人を割り、門前町もシャッター通りになった。大師山清大寺として宗教法人になり拝観料を500円に値下げ、駐車場を無料にしても客はなかなか戻らないまま30周年となった。
福井市の福井北インターから中部縦貫道を通り30分で越前大仏へ到着する。中部縦貫道はまだ全通していないため無料で時間短縮で行きやすくなった。越前大仏を訪れると広い駐車場は閑散としていた。数軒だけが営業している門前町を通って中へ。
まず大門の側の銀杏並木に驚いた。建設時に植樹された木々はしっかり成長し、明るい黄色い葉をいっぱい付けている。秋晴れの空に輝いている。
門から大仏殿までゆるやかなスロープを上がっていく.段差が小さく幅の広い階段は歩きやすい。外国から来たであろうアジア系のカップルともすれ違った。二人で楽しそうに写真を撮っていた。
大仏殿は最初だれもいなかった。読経の声や歌うような声明が静かに流れている。正面の大仏は高さ17メートル、奈良の大仏より大きく建物の中の仏像としては日本1大きいという。中国の大きくても威圧感はあまり感じず、一人で向かい合っていると自然に手を合わせたくなってくる。
賽銭を投じ、ろうそくを立て線香も上げた。大仏殿の3方の壁には石窟寺院の壁に置かれた仏像のように1200体もの高さ1メートル程度の仏像が並んでいる。一つ一つ違った仏だ。大仏の左右には大きな観音と羅漢が2体ずつ立っている。写真を撮っていると何人か新たに来ていた。夫婦とみられる二人は「すごいね」と感嘆の声を上げ、大仏の前に置かれた鉦を鳴らしていた。
大仏殿を出て五重塔や日本庭園など周囲を歩いた。どこも紅葉が美しい、建物の白が青空に映える。30分程度で帰るつもりだったのが1時間でも全体を回りきれなかった。
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金持ちの道楽とか、日本珍百景とか揶揄されることはあるが、落慶から30年たって時間の重みが少しずつ加わってきた。建築は昭和の技術をつくして作られたもので、しっかりとした強さがある。弱者への配慮もある。
機会があったらもう一度行ってみたいと思った。無料で拝観できる初詣もいいかもしれない。
越前大仏は中国河南省の古都洛陽市の竜門石窟寺院の奉先寺洞の石窟に作られた盧舎那仏がモデルになっている。高さ20メートル写実的に優れた大仏で2000年に世界遺産に登録されている。