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えち鉄、福鉄路面相互乗り入れを体験

 よみがえった2つの私鉄

福井県内には2つの私鉄が走っている。福井市からみて北と東側に向かって走る「えちぜん鉄道」。南に向かって走る「福井鉄道」。小さなローカル鉄道だ。どちらも自動車の利便性に押され、経営は苦しく廃線の危機に直面してきた。

坂井平野を走るえちぜん鉄道

特にえちぜん鉄道は、前身の京福電鉄が2000年と2001年に人身事故を立て続けに起こして運輸省(現国土交通省)から運行停止命令を受け、走ることが出来なくなった。安全対策に多額の経費がかかることから京都市に本社のある京福電鉄は廃線方針を打ち出した。

住民や沿線自治体から存続を求める声が強まり、2001年6月の全面運行停止から2年後に第3セクターのえちぜん鉄道が発足。永平寺線は廃線となったものの、福井市と坂井市の三国港駅を結ぶ三国芦原線と福井市と勝山市を結ぶ越前本線の2ルートが存続することが決まった。2003年10月完全に運転再開した。車両に女性アテンダントを乗せ、新しい駅をつくるなどこれまでになかったサービスで乗客を増やしている。

もう1つの私鉄福井鉄道は福井市の田原町駅から越前市の越前武生(旧武生新)駅までのルート。かつては何本もの支線があったがいあまは1線だけ。福井市内の一部が路面通行となっているため、郊外電車が路面を走るということで、電車好きな人には知られていた。福井市から鯖江市を通って武生市までJR北陸本線が並行して走っているためもともと経営は苦しく2007年福井鉄道は「事業者単独での存続は困難」と表明。最終的に線路などの用地は福井県と沿線3市が取得し、運行は助成を受けた新会社が引き継いで継続することになった。

福井県や自治体が運行に関与することになり、利用者の立場に立ったこれまでになかった取り組みがおこなわれるようになった。その大きな成果が2つの私鉄の相互乗り入れだ。もともと福井鉄道の始発駅で乗り換えてきたのが、この駅で線路を接続して乗り入れられるようにした。

 高さが違う電車

福井鉄道はもともと路面と郊外電車の両方を通るためホームが低いが、えちぜん鉄道はホームが高くそのため乗降口の高さも高くそのままでは福井市内の路面部分では乗り降りできない。そのため相互乗り入れするえちぜん鉄道の電車は低床電車となった。相互乗り入れ区間も田原町から6駅先の鷲塚針原駅までに限定し、この間の駅はホームの先に低いホームを延長したり、新たなホームを作ったりした。

 ゆのまちから鷲塚針原で乗り換え

あわらゆのまち駅に入ってくるえち鉄福井行き

2017年6月初め久しぶりにえち鉄を利用する機会があり、あわら湯のまち駅から福井市の福井市役所駅まで乗ってみた。湯のまち駅で市役所までの切符を買い乗車。福井行きのいつものえち鉄の床の高い電車に乗りまず鷲塚針原駅に向かう。

17時19分あわら湯のまち発、鷲塚針原駅に39分着。えち鉄電車が到着した従来の島型ホームの左側に明るい紺色の電車が止まっている。「FUKURAM(フクラム)」の愛称で呼ばれている3両編成の越前武生行き車両だ。ホームも低い。ドア越しにホームの高さの違いがよくわかる。

低床電車の車内。少し狭い

乗ってきたえち鉄電車が出発した後、線路を渡ってフクラムに乗り込んだ。

この駅で乗り換えたのは一人だけだった。この駅から新たに乗り込んできた人と乗客2人を載せてで17時49分発。次の中角駅は低床化の対応工事が行われていないため、通過し九頭竜川を渡って新田塚に停車。さらに日華化学前、八ツ島と10年前えちぜん鉄道が新たに設けた駅に停まる。ホームが低床で乗り降りできるよう先端が低く延長されている。沿線の高校生らがどんどん乗り込んできて福井大学前では席は空いていない。

 田原町で運転士交代

田原町駅では右側の線路に入りいよいよ福井鉄道に入る。さらに高校生が増えてぎっしり満員の状態。ここで福井鉄道の運転士に交代する。

18時2分発。ここからは旧国道8号線を路面電車となる。左右に2車線づつの道路を従え、道の真ん中を複線で走る。交通信号で止まることはあるが、夕方の渋滞でのろのろ進む車を横目に快適に進み、あっという間に市役所前に到着した。ほぼ5分間の路面の旅だった。この電車が終点の越前武生に到着するのは18時47分。相互乗り入れの運転時間はほぼ1時間。いずれチャレンジしてみたい。

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